
「猫の具合が悪そうだけど原因がよくわからない」という場合、血液検査を行って診断することが多いです。
しかし、血液検査と一言でいってもその種類は多岐にわたり、どのようなことを調べているのかわからないという方も多いのではないでしょうか。今回は、猫の健康診断において重要な判断材料となる血液検査について解説していきますので、気になる方はぜひ参考にしてください。
血液検査の前に
猫や犬の状態を把握するために、まず問診が行われます。問診で飼い主様からペットの様子について伺い、その後身体検査となるのが一般的です。
その後、より詳しく体の状態を知るために臨床検査を行います。臨床検査は、ペットから採取した体液から判断する「検体検査」と直接体を見て判断する「生体検査」の2つに分かれており、血液検査は前者である検体検査の1つとなります。
血液検査の種類
血液検査には血球検査と生体検査の2種類があります。一般的にはこの両方を検査し、貧血や炎症の有無、栄養状態、臓器の異常の有無を確認します。
血球検査(CBC)
一般的な血液検査がこちらの血球検査です。血液中のすべての細胞成分を測定し、その形状を観察する検査になります。血球検査で代表的な検査項目には以下のようなものがあり、それぞれの値を確認していきます。
RBC(赤血球数)
体中の細胞に酸素を供給し、二酸化炭素の排出を行う赤血球の数を表します。
PCV(血球容積比=ヘマトクリット値)
血液中の赤血球の割合を表します。
HGB(ヘモグロビン量)
赤血球中の酸素と結びつく色素の量を表します。
WBC(白血球数)
NEUT(好中球)・EOS(好酸球)・BASO(好塩基球)・LYMP(リンパ球)・MONO(単球)の5種類からなる血液成分で、体に異物が侵入した際に体を守る働きをする白血球の数を表します。
GLOB(グロブリン)
リンパ節や脾臓にあるリンパ球で作られるグロブリンの数を表します。
A /G比
TP(総たんぱく質)=ALB(アルブミン)+GLOB(グロブリン)で示し、アルブミンとグロブリンの割合を表します。
PLT(血小板数)
出血したときに止血の働きをする血小板の数を表します。
生化学検査
肝臓酵素や血糖値、腎機能の状態やコレステロール値などを測定し、異常の発見や病気の診断、治療の判定などに使います。なお、臓器ごとに検査する項目はそれぞれ変わります。
TP(総たんぱく質)
血液中のたんぱく質の量を表します。このたんぱく質は適量である必要があり、異常が見られた際は別の処置が必要になります。
ALB(アルビミン)
血液の浸透圧調整と物質の保持、運搬を担うアルビミンの量を表します。これは血液中のたんぱく質の一種で、肝臓で作られます。
GLU(血糖値)
血液中に含まれるグルコース(ブドウ糖)の量を表します。食事やストレスなどの影響を受けやすく、数値が変動しやすいものになります。
BUN(尿素窒素)
たんぱく質が使われた後、腎臓から排出される尿素窒素の量を表します。
CRE(クレアチニン)
腎臓から排出される老廃物の一種であるクレアチニンの量を表します。また、CREの値で腎機能不全のステージ分類を示すことができます。
ALT(GPT・アラニンアミノトランスフェラーゼ)
アミノ酸の生成に必要な酵素であるアラニンアミノトランスフェラーゼの量を表します。以前はGPT(グルタミン酸ピルピン酸トランスアミラーゼ)と呼ばれていましたが、現在はALTで統一されています。
AST(GOT・アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ)
肝臓・腎臓・血液・心筋・骨格筋など多くの臓器に含まれる、アミノ酸の生成に必要な酵素のアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼの量を表します。以前はGOT(グルタミン酸オキザロ酢酸トランスアミラーゼ)と呼ばれていましたが、現在はASTで統一されています。
ALP(アルカリホスファーゼ)
肝臓や胆管骨、胎盤などさまざまな臓器に含まれる酵素のアルカリホスファーゼの量を表します。各臓器の破壊がある際に数値が上がる「逸脱酵素」のALTやASTに対し、「誘導酵素」のALPは異常に高い値であっても、必ずしも重い病気を示すわけではありません。
NH3(アンモニア)
たんぱく質の分解によって腸管で生み出されるアンモニアの量を表します。通常時は肝臓で尿素化合物に分解されるため血液中に溜まることはありませんが、肝機能の低下によってこの値が上がります。
T-Bil(総ビリルビン)
赤血球の中にあるヘモグロビンが代謝して生まれるビリルビンの総量を表します。肝機能の障害によって値が上がり、黄疸の原因となることもあります。
T-Cho(総コレステロール)
血液中に含まれるコレステロールの総量を表します。人間にあるような動脈硬化や虚血性心疾患などの病気が少ない動物の場合、この値は診断の補助として使われます。
TG(トリグリセリド)
血液中に含まれる中性脂肪量を表します。食事内容によって変動するため、こちらも診断の補助として使われる値です。厳密に測定するのであれば、絶食状態で測定するのがベストです。
まとめ
今回は、猫の健康診断の際に行われる血液検査の種類や詳しい測定項目について解説しました。血液を調べると、健康状態が一目でわかります。大切な猫の健康状態について知るために、一度動物病院に相談してみてはいかがでしょうか。
「アイ動物病院」では通常の一般治療のほか、ホリスティック治療やホメオパシー治療、サプリメント治療などさまざまな治療を行っております。また、定期健診や予防接種なども行っておりますので、ご用命の際はお気軽にご相談ください。